通貨と工賃、施設内通貨と特殊通貨

小学生の頃ボードゲームの「人生ゲーム」が好きでした。お金が増えていくのが面白く、いまだに10万ドルは白、5万ドルは緑などと覚えています。中学生になりファミコンが席巻し、ドラクエではゴールドですよね。これも貯まるとうれしいものでした。その後、実社会でアルバイトをし初めて手にした1万円札にはかなりテンションが上がりました。

高齢者のデイサービスでは施設内通貨が発行され、それが利用者のやる気につながり効果的ということで、少なくない施設で導入されています。それをはじめて聞いたのは山口県の有名なデイサービス「夢のみずうみ村」でした。2009年にNHKの「プロフェッショナル」で取り上げられてご存じの方も多いと思います(OT業界でも有名な藤原茂先生が立ち上げた施設です)。リハビリやお手伝いをしたり、ゲームで勝ったりすると施設内通貨がもらえるというわけです。ただ最近では過剰にそれを前面に出したデイサービス(その名もラスベガス!)も出現し賛否両論あり、ある自治体は認可をしないという事態にもなっています。

では「施設内通貨」なんて言わず正式の通貨である「円」を渡せばいいのでしょうか? もし使おうするならいろいろな規制が待ち受けています。最低時給に労基法、公営ギャンブルの法律? ゲームセンターだって換金はできません。だから疑似通貨なのです。

最近終わったドラマ『わたしを離さないで』では、主人公たちは臓器提供のために生まれてきたクローン人間で、外見は普通で一般社会で暮らしているのですが、見えないバリアによって彼らは社会と隔絶されています。移動の自由はなく、携帯電話は当局としか話せない設定になっていますし、そして普通の通貨が持てず特殊な電子マネーしか持たせてもらえません。

通貨をもつことは一般社会との架け橋であり、印であり証でもあるように思います。

一般社会と隔絶された世の中には特殊通貨が現れます。ハンセン病療養所でも使われていました(下の写真参照、説明文には逃亡防止のために使われた、とあり)。昔実習した精神科病院ではタバコが通貨代わりで患者さんは麻雀でタバコを1本単位で賭けていました。

ハンセン病療養所通貨

生活保護費受給者の増加や、不正受給、ギャンブル消費に対して、通貨ではなく食材購入にしか使えない電子マネーやクーポン券、現物支給にしたらどうかという意見もあるようです。実際、外国では導入されているところもあるとか。しかし、上記のような懸念もあります。

疑似通貨を批判しているわけではありません。ゲーム内通貨でもわくわくします。そして、労基法や最低時給によって労働者の権利を擁護することも大切だと思います。

デイサービスの疑似通貨でもなく、最低時給にも達しないのが、当事業所が属する障害者の就労支援事業所における「工賃」です。工賃は通貨「円」でお支払いします。300ユズゴールドとかではありません(笑)。

平成28年3月現在の当事業所の工賃は、1日300円、自力通勤手当200円。あと条件はありますが、皆勤手当月額1,000円。毎日通所の方で月額12,000円程になります。(大阪府の就労継続支援B型事業所の2014年度の平均月額は10,767円)

月末締めで、翌月15日が工賃支払日です。少ない額ですが、皆さんうれしそうにされます。

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